Metal Gear Solid

『One day 〜真夜中〜』

真夜中。

草木も眠る、と言える頃。

スネーク、と呼ばれる彼は、任務の為に分け入った、共産国のジャングルの中を、一人進んでいた。

──蛇の大半は夜行性だ。

……彼のことではなく、爬虫類の蛇。

蛇達が活動する時間帯は、彼等の得物である小動物が活動する時間帯と、概ね一致する。

だから彼、スネークも、真夜中に蠢く。

己がコードネームと同じ、蛇を求める為に。

何故なら、それが、単独潜入を任務と命ぜられた彼の、今の『御馳走』だから。

……そう。

武器も、鬱蒼と生い茂るジャングルの中を生き抜く為に必要な物も碌に持たされず、「何とかして来い?」と、無情にも程がある仕事を求める『上』の『我が儘』に従うしかない彼だから、食料だって、という奴で。

故に、ジリジリと、草一つも鳴らさぬ風に、完璧な匍匐前進で『緑の地獄』を進み続けた彼はやがて、音も気配も消したまま、腰のホルダーからサイレンサー付きの麻酔銃を取り出し構えた。

レーザーサイトの照準を合わせ、動きを止め、果ては呼吸をも止め、トリガーに掛けた指を、一息に彼は引き絞る。

ほんの僅か、銃口より、乾いた音が洩れ。

途端、月明かりだけが頼りの闇の中、地に伏せた彼の眼前を横切っていた、中型の蛇がのたうった。

『蛇』に狙われた蛇は、程なく静かに動きを止め。

にやり、とほくそ笑んだ彼は、麻酔銃を納め、代わりにサバイバルナイフを取り出し、その場に胡座を掻き、慣れ過ぎた手付きで、刃を、捕獲した蛇に薄く突き立て、頭から尾へと一息に引いて皮を剥ぎ。

血抜きもせず、生のまま、ガブッ! と齧り付いた。

この程度のことで壊れるような繊細な胃腸など持ち合わせていない、彼だからこその『技』だった。

サバイバルと言うよりは、原始に近い生活に慣れ過ぎてしまったのか、嗅覚も味覚も、胃腸と同じく、繊細からは掛け離れつつあるらしい彼は、生臭さも何も、感じぬようで。

もぐもぐごっくん、と咀嚼した爬虫類の生肉を飲み込んだ彼は、

「美味い!」

と、思わず大声で叫んだ。

………………途端。

国家機密な研究所を内包するジャングルを巡回していた敵兵の、問答無用の銃撃が、一人、悦に入っていた彼目掛けて飛んできた。

……サバイバル生活に慣れ過ぎて、胃腸や嗅覚や味覚だけでなく、オツムの方も、若干原始に近付いてしまっているのかも知れない彼の、長い夜は未だ続く。

多分、明日の夜も。

End

後書きに代えて

各ジャンルの各キャラ、又は各カップルの某日の某時間帯のお話、という設定で書いた、2009.03〜12の拍手小説@メタルギアシリーズ。真夜中担当な、ネイキッド・スネークさん。

偉大なる彼ですが、いろーーー……んな意味で、間違ってる人だとも思います(笑)。

──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。